がん保険、本当に必要でしょうか?
そう聞かれたら、かつての私なら「公的医療保険があるし、医療費の自己負担もそこまでではないのでは?」と思っていたかもしれません。
けれど、40代の知人ががんになり、治療や通院を重ねる中で「がん保険があるかどうかで、これほど生活の安心感が違うのか」と実感する出来事がありました。
2人に1人ががんになる時代、その現実と直面したら…

国立がん研究センターのデータによれば、日本人が一生のうちにがんと診断される確率は、男性で約65%、女性で約51%。つまり、2人に1人ががんになる時代です。
さらに、厚生労働省の統計では、年間の新たながん罹患者数は約100万人。これは、毎日約2,700人が新しくがんと診断されている計算になります。
これだけ身近な病気でありながら、がん治療は一筋縄ではいきません。
ケース紹介:乳がんと診断されたAさんの場合
私の知人であるAさん(42歳・会社員・2児の母)は、会社の健康診断で乳がんが見つかりました。幸い早期発見ではあったものの、手術後のホルモン療法と放射線治療が必要となり、1年間で計60回以上の通院を余儀なくされました。
Aさんのがんは入院日数わずか5日。しかし治療の多くは外来通院で行われ、仕事を調整しながらの生活でした。Aさんが語っていたのは、
「入院保障だけの保険にしていたら、ほとんど保険金が出なかったと思う。通院保障があったおかげで、治療費や交通費をカバーできたのは本当にありがたかった」
という言葉でした。
がん保険で重視したい5つの視点

がん保険といっても、商品によって中身はさまざまです。保険料だけを見て選ぶと、いざという時に「思っていた保障が出ない」ということになりかねません。以下のポイントを押さえることで、より納得できる保険選びができるはずです。
①「診断一時金」は高額で、かつ複数回型が安心
がんと診断された瞬間に受け取れる「診断一時金」。これは非常に重要です。
たとえば、治療を始める際の自己負担や、仕事を一時的に休むことによる収入減、子どもの預け先や家事代行など、想像以上に多くのお金が必要です。
また、がんは再発や転移のリスクが高く、1回限りの保障では不安が残ります。2年に1回などの条件で、診断一時金が複数回受け取れるタイプは、長期にわたる治療に備える意味でも大きな安心になります。
②「通院保障」があるかどうかは極めて重要
冒頭のAさんのように、がん治療の多くは現在「通院ベース」です。抗がん剤やホルモン療法、放射線治療などは、ほとんどが外来で行われます。
しかし、通院には治療費だけでなく、交通費や休業による収入減、子どもの送迎など付随するコストも大きいもの。1回通院するたびに給付があるタイプなら、金銭的にも精神的にも非常に助けになります。
③「入院・手術・放射線」も網羅されているか?
基本的な医療保障として、入院給付金や手術給付金、放射線治療給付金があるかも確認しましょう。とくに、がん専用の保険であれば、これらの治療を網羅的に保障しているかどうかは要チェックです。
最近では、がん治療パッケージとして一括で保障するタイプも増えており、細かく請求する手間が減るメリットもあります。
④「先進医療特約」は医療保険で備える方が合理的
よく勘違いされがちなのが、「がん保険に先進医療特約をつけるべきか?」という点です。
結論から言えば、先進医療特約は医療保険に付帯するのが基本であり、がん保険につける必要はありません。
なぜなら、先進医療の対象となる治療(重粒子線・陽子線治療など)は、がん以外の病気でも使われる可能性があるからです。医療保険で包括的に備えることで、がんに限らず高額治療に対応できる安心感があります。
⑤「再発・長期治療」への備えがあるか
現代のがん治療は、“慢性疾患としてのがん”とも言われるように、長く付き合っていくことも増えています。
だからこそ、一定期間後の再発に備えて再給付される保障や、がん治療が長期化した際に経済的支援をしてくれる仕組みはとても重要です。1回目の保障で終わってしまう保険では、治療の継続が厳しくなるケースも。
保険に入っていなかったら…という「もしも」に備える

がんは、突然やってきます。
Aさんは、保険に入っていたからこそ「仕事をしながらでも治療を続ける」という選択ができました。逆に、もしも保険がなかったら「治療を選ぶ自由」がなかったかもしれません。
がんになったとき、金銭的な余裕があるかどうかで治療の質が変わるといっても過言ではありません。通院でも保障がある、長期治療や再発にも備えられる、まとまったお金が早期に受け取れる——そうした“現実的な安心”をくれる保険は、決して無駄なものではないのです。
まとめ:保険は「加入の有無」よりも「中身」がカギ

がん保険は、「入っているかどうか」よりも、「どんな保障内容か」が最も大切です。保険料が安くても、肝心なときに保障が出ないのでは意味がありません。
一時金がしっかり出る
通院にも対応
複数回の診断でも支払われる
医療保険で先進医療をカバー
再発や長期治療にも安心できる内容
このような保険を選ぶことが、将来の自分と家族を守る大きな一歩になります。
がんは予告なく訪れます。しかし、そのときに「治療に専念できる環境」を用意しておくことは、いまの私たちにもできる“人生の選択”の一つです。